2つの実証研究

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ジェンダード・イノベーションの考え方を取り入れた研究開発

本研究開発では、ジェンダード・イノベーションの考え方を取り入れた2つの実証研究、「高校生を対象とした進路選択に関する大規模調査」と「知・経験のD&I実現のための家事支援」を実施します。

  • 【実証研究1】高校生を対象とした進路選択に関する大規模調査

    日本における理工系女性人材育成の加速を図る有効な施策を提言することを目的に、高校生の進路希望、進路選択の自由、保護者や教員からの働きかけの実態についてのウェブ調査を広範囲に実施します。この研究は、学びの分野における多様性を促進し、新たな学び方を包摂する社会を実現することを目的としています。

    (1)背景

    D&I社会の実現のためには、理工系女性人材の育成を加速することが喫緊の課題です。お茶の水女子大学は、2015年から、女性生徒の理工系への進路選択の支援活動を行ってきており、現在は、2022年4月に設置された理系女性育成啓発研究所がその活動を担っています。

    研究所では、初等・中等教育の女子生徒が理工系分野に興味をもつ機会を提供するとともに、進路選択に大きな影響を与える保護者と教員に対して、理工系分野への進路選択についての理解を促進させる活動を行っています。

    2023年1~2月には、本学の大学生・大学院生を対象とする「大学への進路選択に関する学内調査」を実施しました。保護者へのアンケートも含む本調査から明らかになったのは、理数科目の苦手意識や、男性が多い分野では女性は不利であるといったバイアスが、理系選択を避ける理由となっていたことでした。

    「実証研究1:高校生を対象とした進路選択に関する大規模調査」では、同様の調査を全国の高校生を対象に実施し、進路選択についてD&Iの視点から分析します。

    (2)研究開発の実施方法

    高校生の進路希望、進路選択の理由、保護者や教員からの働きかけ、固定的性別役割分担意識、D&Iへの意識、将来の職業選択に関する意識等を調べるため、webアンケート調査を実施します。

    (3)独創性・新規性

    • 進路選択だけではなく、高校生のD&Iに対する意識も調査する
    • 女子生徒の理工系への進路選択を阻む要因を様々な角度から明らかにする
    • 地域性という視点を盛り込む調査を実施する

    (4)社会実装

    • 全国レベルの調査から多様な高校生のデータを収集して、地域間格差の解決に貢献する
    • 進路選択における効果の高い取組を教育に関する施策として社会実装する

    (5)研究メンバー

    加藤 美砂子
    (責任者)
    理事・副学長
    理系女性育成啓発研究所長
    植物生理学
    植村 知博理系女性育成啓発研究所 教授植物オルガネラ動態学
    近藤 るみ基幹研究院自然科学系 准教授
    理系女性育成啓発研究所 研究員
    進化遺伝学
    雨宮 敏子理系女性育成啓発研究所 助教生活材料、高分子・繊維材料
    深井 綾乃リサーチ・アシスタント
    博士後期課程人間発達科学専攻
    社会学

     

  • 【実証研究2】知・経験のD&I実現のための家事支援

    D&Iの実現と社会への浸透のために、在宅勤務という労働の場としての家庭環境に目を向け、家事労働における家庭内のジェンダー役割の変革を検討して、ジェンダード・イノベーションに基づく家事支援方法を提示します。この研究は、これまでの性別役割分業を脱し、誰もが仕事と生活を両立することが可能な男女共同参画社会を創造するイノベーションの礎になるものです。

    (1)背景

    コロナ禍を経て、働く場所と時間の選択肢の多様化が進んでいます。在宅勤務という就労形態により家庭が収入労働の場にもなったことから、仕事スペースの確保や、女性の家事育児負担の増加という、新たな課題が生じました。その一方で、家族団らん時間の増加や夫の家事労働への参加意欲の向上という変化も報告されています。

    「実証研究2:知・経験のD&I実現のための家事支援」はこのような社会変化を見据え、以下の3点を目的とした研究・調査を実施します。

    1. 働く場所の選択肢である家庭環境の問題を明らかにすること
    2. 家庭におけるジェンダー役割の変革を家事労働から検討すること
    3. 「知・経験のD&I」実現のためにジェンダード・イノベーションに基づく家事支援方法を提示すること

    長年にわたり女性が担ってきた家事労働が、男性ひいてはすべての生活者の「知・経験」となり、価値ある生活スキルとして認識されるようになることを目指します。

    (2)研究開発の実施方法

    1. ポストコロナにおける在宅勤務の現状調査:企業調査による現状の把握、在宅勤務を行っている個人への調査
    2. 家事・育児に関わる生活調査:全国の共働き夫妻を対象に、家事・育児の経験、外部化への態度(家電利用や家事・育児支援の利用)、性別役割分業、生活満足度、幸福度等について調査
    3. 家事動作調査:調理動作を動画撮影する調査を実施して家事動作データベースを作成し、日常的な調理経験や頻度、性別による特徴を明らかにする
    4. ジェンダード・イノベーションによる性別を考慮した家事支援方法の開発

    (3)独創性・新規性

    • 「知・経験」が従来の職場から在宅勤務へ移行した際に家事などの生活スキルに及ぶという想定について、人的資本視点から検討する
    • 家事支援方法の開発において、ジェンダード・イノベーション視点を採用する
    • 本学の附属中学校の家庭科授業内でテクノロジーを用いた生活スキルを検討できる

    (4)社会実装

    • 時間や場所に捉われない在宅勤務と家事・育児について明らかにして、男性の家事支援のためのコンテンツを特定する
    • 中学校家庭科教育における実践的な教材開発を目指す

    (5)研究メンバー

    斎藤 悦子
    (責任者)
    ジェンダード・イノベーション研究所副所長・教授、SDGs推進研究所長生活経済学、生活経営学
    高丸 理香ジェンダード・イノベーション研究所 特任准教授ジェンダー社会学、キャリア教育学、海洋学
    郝 文佳リサーチ・アシスタント
    博士後期課程ジェンダー学際研究専攻
    ジェンダー学
    光畑 由佳博士後期課程ジェンダー学際研究専攻
    有限会社 モーハウス代表
    ジェンダー学
    山本 咲子新潟大学 講師生活経営学
    大竹 美登利東京学芸大学 名誉教授生活経営学、家庭科教育
    舘 直宏NPO法人おっとふぁーざー 代表理事教育学、家族社会学