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【開催報告】D&I社会実現のための学び方・働き方に関する実証研究 中間報告シンポジウム

開催日
2025/10/24(金)
開催時間
16:00~18:00
開催場所
お茶の水女子大学 国際交流留学生プラザ2階多目的ホール

2025年10月24日(金曜日)、SIPプロジェクト「D&I社会実現のための学び方・働き方に関する実証研究」の中間報告シンポジウムを開催しました。本学会場とオンライン合わせて約90名が参加し、シンポジウム内およびプログラム後の懇親会でも活発な意見効果が持たれ、盛況のうちに終了しました。

総合司会を務めたのは、実証研究1のメンバーである植村知博教授。研究開発責任者を務める石井クンツ昌子理事・副学長による事業紹介の後、実証研究1「高校生を対象とした進路選択に関する大規模調査」および実証研究2「知・経験のD&Iのための家事支援」の研究報告を行ったのち、SIP課題「ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築」の西村訓弘PDと東博暢SPDを交えたディスカッションを行いました。

以下は、当日の研究報告およびディスカッションの要約と録画映像です。

 

開会挨拶と事業紹介 石井クンツ昌子

上の画像をクリックすると開会挨拶・事業紹介の録画が視聴できます

本学の研究代表者である、石井クンツ昌子理事・副学長による開会挨拶と事業紹介では、2023年度に開始した戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期として実施している本学の研究開発テーマ「D&I社会実現のための学び方・働き方に関する実証研究」の目的、体制、実証研究の内容など、プロジェクトの概要が説明されました。本学のSIPプロジェクトの拠点は、2022年に設立されたジェンダード・イノベーション研究所にあり、実証研究の内容にもジェンダード・イノベーションの視点が取り入れられています。

実証研究1調査報告「大規模調査から見えてくる日本の高校生の進路選択」加藤美砂子

上の画像をクリックすると加藤美砂子氏の報告の録画が視聴できます

最初の研究報告は、共同研究者として実証研究1「高校生を対象とした進路選択に関する大規模調査」を担当する加藤美砂子理事・副学長による「大規模調査から見えてくる日本の高校生の進路選択」です。実証研究1の調査は、本学の理系女性育成啓発研究所を中心に実施されています。研究報告の冒頭では、2022年に設置された同研究所の女子中高生、保護者、教員を対象とした事業活動が紹介されました。本SIP事業における調査では、男子高校生と女子高校生を対象として、大学進学の進路選択における性差の分析をしています。

予備調査を経て実施した第1回調査の主な結果は以下のとおりです。

  • 理工系進学の男女の現状では、女性は医療系が多く、男性は工学と理学系が多い。
  • 進路選択の時期は高校1年生までが多いが、文系・理系の選択は高学年になるほど理系が低くなり、理系の選択をやめていく人がいる。
  • 理系進学をやめる大きな理由は、数学や理科の苦手意識や成績の伸び悩み。
  • 女性の理系選択には、医療系職業への就職が意識されている。
  • 女性の理系希望者は働き続けるというライフコースを早い段階から決めている。
  • 女性の工学部希望者は博物館見学、理学部希望者は実験教室や体験イベントを相対的に多く経験している。

実証研究1では、第1回調査の結果を踏まえた第2回調査を、2026年度に実施します。

実証研究2研究報告1「家事行動のジェンダー分析:福井調査の結果より」山本咲子

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実証研究2「知・経験のD&Iのための家事支援」からは、3つの調査結果が報告されました。ひとつめは山本咲子新潟大学講師による「家事行動のジェンダー分析:福井調査の結果より」です。この調査では、夫と妻に同じメニューの調理をしてもらい、その様子を録画して、手順や動作、調理に要する時間の男女差を調べてきました。最近の調査では、女性よりも男性、男性の中でも調理経験が多い人よりも少ない人の方が調理に時間がかかることに着目し、調理動作が止まる時間と回数を調べ、調理動作が止まった理由の聞き取りをしました。そこから明らかになったのは、レシピに書かれている食材の切り方や調味料を計る道具の選び方、火加減や「サッと炒める」といった言葉遣いで説明される加熱具合がよくわからないことが、調理の手が止まる原因になっているということでした。調理は、家庭内の家事分担のひとつの要素であるばかりでなく、役立ち感や楽しさなど、自己肯定感を高める心理的効果も得られる活動でもあります。自分の食事を自分で準備する生活能力の重要性の提示も、本研究が目指しているところです。今後は、これまでの調査結果をもとに、調理経験が少ない人を支援するレシピ開発や、中学校家庭科授業における調理スキルの獲得と調理の習慣化を考慮した授業コンテンツの開発に取り組む計画です。

実証研究2研究報告2「テレワークで考える仕事と家庭生活の両立」高丸理香

上の画像をクリックすると高丸理香氏の研究報告の録画が視聴できます

次の報告は、高丸理香IGI特任准教授による「テレワークで考える仕事と家庭生活の両立」です。コロナ禍によるリスク回避として導入が進んだテレワークは、ポストコロナでは仕事と家庭生活を両立させる手段とみなされるようになり、2025年4月の育児・介護休業法改正では、テレワーク導入が努力義務化されました。こうした状況を背景に、本研究では、労働者のテレワークに関する意識調査を行いました。インターネットを使った質問紙調査の回答数は約600人で、テレワークの利用「あり」と「なし」はほぼ同数、「あり」「なし」それぞれの男女の内訳ほぼ同数で、ここでは、テレワーク利用ありの261名の回答分析の結果が示されました。

テレワーク利用者の中心層は20~40代、そして小学生までの子どもがいる人たちですが、テレワーク利用の理由としては、「会社の規則・制度として定められているため」が半数を超え、家族のケアを理由とするものの合計よりも多くなりました。テレワーク利用による変化の有無をたずねる項目では、仕事に関する負担感の減少や集中力が高まり生産性が上がったなど、ポジティブな変化を感じている傾向がみられました。そうした変化を感じているのは女性のほうが多いという男女差がありました。さらに、テレワークの頻度も合わせた分析では、在宅勤務を週に数回にすることに、余裕をもたらす効果があることもわかりました。

実証研究2研究報告3「男性育児休業の実態」斎藤悦子

上の画像をクリックすると斎藤悦子氏の研究報告の録画が視聴できます。

続く研究報告は、共同研究者として実証研究2を担当する斎藤悦子IGI教授による「男性育児休業の実態」です。男性の育児休暇取得率の政府目標は2025年までに50%、2030年までに85%で、近年の急上昇により、2024年度で40.5%を達成しています。しかし、育休取得はしてもあまり育児に携わっていない「取るだけ育休」という実態の報告もあり、育休の質が課題となっています。本研究では、夫が育児休暇を取得した夫婦を対象に、インターネットによる全国調査を実施しました。調査では、夫と妻の両方に、育休中と育休後の家事分担率がどのぐらいだと思うかを回答してもらいました。夫、妻、親らの分担割合を、育児、食事の支度、洗濯、掃除・片付け、買い物について聞き、分担割合の認識の違いを比較しています。調査に参加した夫の育児休暇取得日数の平均は91日でした。「取るだけ」と揶揄されるような数日だけの取得ではなく、家事・育児の負担もある程度引き受けていましたが、分担割合の認識には夫婦間で差がありました。

育児休暇の夫の分担率は、育児では4割ほどです。食事の支度の分担率は、ほかの家事に比べて低くなっています。洗濯、掃除・片付けは夫婦で分担率の認識が異なっていて、夫は半分以上を担当していると考えているのに対し、夫は半分以下だというのが妻の認識でした。しかし、買い物については半分以上を夫が担当したと認識が一致していました。また、育休後の夫の育児・家事分担率は、育休中を大きく下回りました。育休後のワークライフバランスとして、どれだけ夫が育児、家事を担うことができるかは、育休取得率向上の次に来る課題です。

実証研究2では、生活スキルひとつである調理、テレワークなどの柔軟な働き方、家庭内のジェンダー役割の平等に焦点を当てた調査結果から、ワークとライフのあり方を再考し、家庭科教育プログラムの開発と成人男性の生活自立など、幅広い世代を対象にした施策を検討しています。

ディスカッション「人口減少時代のD&Iとイノベーション」

上の画像をクリックするとディスカッションの録画が視聴できます

研究報告に続くディスカッション「人口減少時代のD&Iとイノベーション」では、本学の研究課題が参加するSIP課題「ポストコロナ時代の学び方・働き方を実現するプラットフォームの構築」(通称:ポスコロSIP)の西村訓弘プロジェクトディレクターと東博愓サブプログラムディレクターにご登壇いただき、石井クンツ昌子氏がモデレーターを務め、加藤美砂子氏、斎藤悦子氏との議論が持たれました。

各研究報告へのコメントとして、西村氏からは、本研究で、これまでなんとなくそうだろうと思われていたジェンダーの側面が、はっきりとデータ示されたことの意義と、女子学生の理系進学の少なさやその理由が自身が高校・大学生であったころから変化していないと思われるもどかしさが感想として述べられました。男性の家事参加については、男性の調理はイベント的に楽しむことはあっても習慣化ができていないのに対して、女性にとっては生活の一部であるというような考え方の性差あるだろうということと、その違いは高度経済成長期に作られた日本の仕組みに端を発しており、これからの人口減少時代に向けた変化のために、本研究成果のデータは非常に貴重であるとの評価が示されました。

東氏からは、理工系の女性の少なさは研究開発型のスタートアップにおいても顕著だとの話がありました。合わせて、起業を支援する投資家にも女性が少ないという課題があるとのこうです。また、そうした現状を受けて、ものづくりの産業が盛んな地域では、製造業で働く女性たちがSNSを使って働き方についての情報発信をしたり、地方自治体が女性起業家や女性経営者を応援する動きが始まっていることが紹介されました。

次に、モデレーターから、「人口減少時代のD&Iとイノベーション」への各研究成果からの貢献は? という質問が投げかけられました。斎藤氏からは、AI技術が急速に発展している中ではあっても、家事労働はAIで代替することができないものであり、生活の仕方の中の男女差に目をむけることで、個人が力を発揮できるところが明らかになるのではという考えが示されました。また、理系進学を志望する女子学生は、結婚・出産後も働き続けることを希望しており、理系に進む女性たちが自分たちの未来像を実現できる社会の構築は、私たちが成し遂げておかなくてはいけないことであり、そこに実証研究2の成果が貢献することが示唆されました。加藤氏からは、イノベーションを生み出す環境には多様性が必須であるとして、理工系の学びで得た知識を活かして未知の課題に取り組みそれを解決する力を持った女性人材の育成に資する知見は本研究の貢献であるという示唆と合わせて、そうした人材育成に携われること喜びでもあることが述べられました。

これに続く議論では、日本の、特に大学受験における、文系・理系分離の構造と、現在進められている分離融合の学びの重要性への指摘に話が展開しました。西村氏は、自身が理系の研究者として起業をして経営者をした経験にも触れ、サイエンスだけでは解決できない問題もあり、社会情勢も把握した上での判断ができるようになるためには、文系・理系を縦割りととらえない考え方を、中学・高校レベルの教育でも教えていく必要があるのではとの考えが示されました。東氏からは、大学での文・理の選択は一生を決めるものではなく、リカレントやリスキリングなど、その時々で必要になる知識やスキルを学習するタイミングはあることが指摘されました。また、AI技術の利用が急速に進む中、AIが取って代わることができない分野へのスキルやキャリア、人材の転換の必要性に注目が集まり、盛んに議論がされるようになってきているそうです。

ディスカッションの結びでは、西村氏から、人口減少を不利な状況ではなく有利なものとして捉える視点が示されました。AIなどの技術発展により、これまで5人でやっていたことを3人でするような変化が始まり、その中では、人間が持たなければいけない能力として、理解力や発想力の向上が求められるようになっています。個人個人が己の持つ能力を発揮できる環境で、個性を活かしてイノベーションを起こし、社会の課題を解決することが、人口減少をプラスと捉える視点からの「人口減少時代のD&Iとイノベーション」の展望です。

閉会挨拶 石井クンツ昌子

上の画像をクリックすると閉会挨拶の録画が視聴できます

閉会挨拶では、研究開発責任者の石井氏より、本研究の成果からのイノベーション創出や産業界との連携推進の抱負が述べられました。

SIPプロジェクト「D&I社会実現のための学び方・働き方に関する実証研究」では、今後も、学会発表やシンポジウム開催、ウェブサイト上での公開などの形で研究成果の発信を進めてまいります。

記録担当:吉原公美URA

録画集

画像をクリックすると、各報告、ディスカッションの動画が視聴できます。

【全体】

 


【 開会挨拶と事業紹介 】

石井クンツ昌子

 

【  研究報告 実証研究1  】

加藤美砂子

大規模調査から見えてくる
日本の高校生の進路選択

 


【  研究報告 実証研究2-1 】

山本咲子

家事行動のジェンダー分析
~福井調査の結果より~

 

【  研究報告 実証研究2-2 】

高丸理香

テレワークで考える
仕事と家庭生活の両立

 


【  研究報告 実証研究2-3 】

斎藤悦子

男性育児休業の実態

 

【 ディスカッション 】

人口減少時代のD&Iとイノベーション


【 閉会挨拶 】

石井クンツ昌子